呑んだくれ改めレッツゴー痛風日記
2006-12-10
_ 失われた町
三崎亜記の失われた町を読んだ。
三崎亜記といえば、『となり町戦争』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。二作目の『バスジャック』も好評の期待の小説家、とのことですが、正直あまり好きじゃありませんでした。『となり町戦争』は現実感のなさばかりが目立ってイマイチだったし、『バスジャック』は発想のユニークな不思議なストーリーを抑制のきいた文章でつづる独特の世界観はまぁ面白かったが、ツッコミが足りなくてふざけてるだけじゃん、と物足りなさも感じていました。
で、初の長編という本作はどうか。
結論から申し上げると、大変面白かった。
「町」が消えるという着想自体が奇抜だユニークだが、そこにありったけのリアリティを感じさせるための精巧な舞台設定。奇抜な発想だけに頼らずに、違和感や矛盾のない現実感たっぷりの世界を創りだしたという点においては、現実世界から見えないところで事件が進むというリアリティのなさを描いた『となり町戦争』とはアプローチが真逆でしょうか。矛盾のない世界観を創り出して提示した点において、現代(あるいは近未来)版のファンタジーともいえるでしょう。
7つのエピソードをエピローグとプロローグで挟むという構成も成功していると思われます。1つ1つのエピソードが有機的に絡まりあってひとつの長編として構成されていく手法は、まぁ、ありがちなんですが、序章の「プロローグ、そしてエピローグ」で提示されたキーワードをそれぞれのエピソードで紐解いていく丁寧さがうれしいし、登場人物ひとりひとりの物語もきちんと描ききっている点において、1つの短編としてしっかり機能していると思われます。
主題は「町」の消滅という理不尽で得体の知れない巨大な力に、(たとえ自分を犠牲にしても)信念を持って立ち向かっていく人々を描きました、ってところなんでしょうが、こういうテーマにありがちな「はかなさ」とか「うつくしさ」というのは希薄で、むしろ「たくましさ」「力強さ」「前向きな明るさ」というものを感じました。
久しぶりに勇気を与えてくれるすばらしい本に出会いました。
ただ、やっぱり文章は稚拙だし、「澪引き」のエピソードはストーリー展開にややムリがあったんじゃないか、と思ったり。
_ 初命日を迎えて「家」を守ることを考える。
今日はおとんの初命日だったので、お寺さんに来てもらってお経をあげてもらいました。もう、1ヶ月も経ってしまったかと思うとやっぱり寂しい。
二人ともいなくなってしまったので、家に住むのは僕だけになってしまったし、今後は僕が家と墓を守っていかないといけないわけですが、守るということを真剣に考えると、やっぱり独りじゃツライなぁ、もっというと女手が必要だなぁ、と痛烈に思う。家をきれいな状態に保っておくために、純粋に人手が欲しいということもあるけれども、やっぱり女性の観点じゃないと気がつかないところがたくさんあるわけで、特に水周りとか。いくら家事もしっかりやる男を自負していても女の子にはどうしてもかなわない部分があるわけで。
さらに、「家」を守るということを考えた場合に、それは家屋・建物を守るということだけじゃなくて、その家の伝統(というと大げさですが)を守っていく、ということもあるわけで。じゃあ、家の伝統ってなーに?ということを考えると、おかんや親戚のおばさんの姿が思い浮かぶわけ。盆や正月、あるいは冠婚葬祭で誰かの家に親戚一同が集結した時、オバサン達はみんなで台所に立って、みんなが腕をふるって料理をこしらえていました。その間男どもは何もしていないか、というとそんなことはなく、実務的な実作業をこなしたり、今後の計画を話し合ったりということをしてました。と、思う、多分。ともあれ、僕はそういう親戚同士のあつまりの時のオバサンたちがわいわい集まって美味しい料理を作ってくれるのがとっても好きだったし、これからそういう機会がある場合はそういう雰囲気の家にしたいと思うわけで。
親戚同士の集まりじゃなくても、うちのおかんは人をもてなすのが大好きな人だったので、僕の友達が遊びに来た時なんかもとても気持ちよく接してくれた。どんな時でも気持ち良い笑顔で迎えてくれて、美味しいお手製のお菓子を出してくれたりしてましたね。僕はそれがとってもうれしかったし、友達のうちの何人かが今でもそのことを懐かしそうに語ってくれたりするのを聞くと「僕は友達に恵まれてきたと思うけどそれはおかんのおかげだったんだなぁ、」と、おかんに対してものすごい感謝の気持ちであふれたりするわけで。おとんが会社の同僚なり後輩なりを連れてきた時も精一杯のおもてなしをしてましたっけ。
こう思い返してみると、家の伝統とゆーか「家と他者との関わりの中で自分がとても好きだったこと」というのは、おかんなりおばさんなりという女性の働きが目立つなぁ、と。で、結論としては、やっぱり家を守るためには女手が必要だなぁ、と。早く嫁さん見つけないといかんなぁ、とちょっと焦ってきた。
こんなことを書くと熱心なフェミニズム論者の方々から批判・非難を受けそうだけど、しょうがないじゃん、基本的におばちゃんラブなんだから。